首里手愛好会/Society_of_shurite_fans

空手の型をやっていて思うこと

突き-引き手

突きの時の引き手について今朝の通勤中にふと思いついたので。

玄制流では最初に突きを教わったとき、引き手は突き手よりも意識して強く引く様に、と教えられた。確か、作用反作用でそうすることにより突きの威力が増すとか、そんな説明だったと思う。背後の相手に対する猿臂等も言われたように思う。当時、小学生相手に引き手を教えるためにそういう言い方をされたのだろう。

大学空手部では、まともに引き手を意識している人なんて居らず、諸先輩方を含め皆さん、引き手はとても甘かった。引く力によって突く威力がむしろ弱くなるからとか、そんな話もあったと思う。大学空手部は引き手についての具体的な教えはなかったが(前に踏み込む時に自然に腰に引いて、程度)、江上空手だったので、余計な力を入れればそれによってむしろブレーキが掛かってしまうからとか、そう言った感覚だったろう。それは“柔らかい空手”とか吉福先生の著書とかいろいろなところで言われているし、ボディビルダーの突きは遅いし効くとは思えないので(シュワちゃんの正拳突きとか、想像できませんよね)、そうだろうと思う。正面からまともにぶつかって受けたら力が違うから受けられるかどうかは判らないが・・・。

では、引き手は強く引いて腰に、と言う一般の現代空手の引き手の教えは何なのだろうか。この答えは富名腰義珍先生の「琉球拳法唐手」だろうと思う。

“手技”の項で、「引き手とは敵の入れてくる手を利用しそれをつかまえて引きながら突く・・」と記載されている。ナイハンチ第三図が参照されているがそれは最初の右方向への猿臂の図である。右背手で相手を掴んで引き込みながら猿臂ということだろうか。猿臂が本来は突きでも可と言うことか・・。あるいはその後で相手を捕まえて下段払いして引き込みつつ鉤突きか。

また、公相君の最初の方で正面に向かって突き・外受けを左右でやる動作のところで、「・・どこでもつかまえたら引くと同時に突くので敵の力を利用して二倍の力で当たる訳だ」と書かれている。

つまり、現代空手で失われた掛け手・取り手を前提として、掴んだら引き込みつつ突く、そのための引き手と言うことである。

現代空手は掛け手・取り手を捨てておきながら、それを前提とした引き手を教えるのだから、残念ながら教授の論理性が不十分。と思う(言い切ると怒られそうなので)。