突きについて思い出したことがあるので。
玄制流での突きは突いた後、ちょっと肘を落とす感じで突き手を引け、常に引くことを意識せよと教わった。相手に突きが当たってから、突きのエネルギーが跳ね返ってくる前に引くことで突きの威力を増すんだとか、突き手を相手に取られないようにするためにとか教わった。工学的に前者はどうかと思うが（吉福先生の著書でも空手の突きの威力は他の格闘技より低いとの計測結果が紹介されていた）、後者は正しいと思う。
一方、大学空手部では、突きは突き切るようにと教わった。引くことは全くの想定外。江上空手なのでとにかく柔らかく・力まず、引かずに前へ。ただ、江上茂先生は、競技化が進む固い・力む空手の経験者ということを考えに入れる必要があると思う。あれを経験した人にとって、力むことはボディービルダーによる突きのようにむしろ威力を殺してしまっているということを感覚的に知っているのではなかろうか。また、力めば相手に動きを悟られる。
筆者は全く力まない柔らかい突きは（以前紹介した）ダイラタンシー流体や、水ですら無い、スポンジやゴム風船のようなものであり、効かないのではなかろうかと思う。固い・力む空手の経験者は力むのではなく、前に出す力を残したままその逆の力を抜くことを無意識に意識しているのではなかろうか。腕の重さを伝えるにはせめて水の固さ（剛性）は必要だろう。でも、それを教えている人はあまり居ないように思われる。大学空手部でも突きを腹で受けると“えっ？”と思うようなのが多かった。
ちなみに筆者の突きの理想はボクシングのストレート。突き手ならボクサーが最強。
